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デキる管理職の「動機づけのシナリオ」

こんにちは。

モチベーションLAB所長です。

今回は、「デキる管理職は、動機づけのシナリオ」というテーマで、「ザンネンな管理職」と、「デキる管理職」との比較から、動機づけのポイントについて考えてみたいと思います。


イントロ

最初に人材育成について簡単に述べたいと思います。

人材育成とは、「組織に貢献できるスキルと行動力を兼ね備えた人材に育てる」ということですから、多くの部下をマネジメントする立場にある管理職は、責任感と使命感をもって取り組まないといけない「企業の生命線」ともいうべき重要な課題ですね。

  • その人材育成に際しては、
  • 成果を出すためにはスキルが必要だ
  • だから部下育成に取り組んでいかないといけない
  • しかし、その部下にモチベーションがないと
  • 育成に取り組んでもうまくいかない
  • だからまずは動機づけが必要だ

こういった考え方を持っている管理職の皆さんは多いと思いますし、私もこの考え方は正しいと思います。

ではどの動機づけをどのように行っていくべきなのかということに関しては、できる管理職とザンネンな管理職とでは大きな差があるようです。

 

動機づけは人材育成の最重要事項

先ほど、人材育成とは、「組織に貢献できるスキルと行動力を兼ね備えた人材に育てることと述べました。

その為に、必要な知識・技術・行動などにおいて、個人個人の課題を明確にして、それを具体的な目標として定めた上で、指導したり、 考えさせたり、動機づけたり、 ほめたり、あるいは叱ったりしながら、一つひとつレベルを高めていくことが人材育成のプロセスだと思います。

今回は、この中で、特に重要なこととして「動機づけ」ということを取り上げますが、

  • どれだけ上司の指導がうまくても
  • どれだけわかりやすい教材があっても
  • どれだけすごい研修講師がいても

本人にやる気がなければ、すべて空振りに終わります。

しかし、うまく動機づけて、意欲を高めることは、指導や教育の効果を最大化させることに繋がりますし、意欲が高い人に対しては、もはや指導や教育は必要ないのかもしれません。

 

したがって、

「成果を出すためにはスキルが必要だが、その部下にモチベーションがないと育成に取り組んでもうまくいかない。だからまずは動機づけが必要だ」

というのは、まさしくこういうことだろうと思います。

 

 

コカ・コーラでの事例

ここで、私が人事とキャリア開発部門の責任者を務めた時代のコカ・コーラウエスト株式会社の人材育成への考え方をご紹介したいと思います。

コカ・コーラの時代に、相当な数の研修を受けましたし、あるいは人材育成担当部門の責任者として、研修に立ち会ってきました。

その中で気づいたことは、当たり前といえば当たり前なのですが、研修受講者の全員が、熱心に受講しているとか、あるいは集中力が高いかと言うと、必ずしもそうではないということです。

忙しいとか、興味がないとか、あるいは受講対象者だから仕方なく研修に参加しているなど、色々な理由があるのだとは思いますが、そもそも研修に意欲的でない人の集中力は当然低いです。

そこで、やる気がない人に研修を受けさせても仕方がないということで、ある時から対象者全員に受講させるのは、新入社員研修と新任管理職研修のみとしました。そして、これ以外の研修は、すべて自己啓発型に変えました。

この自己啓啓発型研修は、原則として有料です。実際にかかる研修費用の一部を受講者に負担させるようにしていきました。

また、この研修は土曜や日曜日に開催しますが振替休日を設定することやましてや休日出勤手当の支給対象にはなりません。あくまで自己啓発なのです。

 

 

自己啓発型コースの効果

それくらいの自己負担をしてでも、学ぼうという人を会社は応援しようというコンセプトで、階層ごとやテーマごとに様々なプログラムこういったプログラムを展開してきましたが、幸いなことに各コースとも定員を上回る応募があって講師の都合が付けばコースを増やしたり、それが難しければ定員内に収めるために選考を行ったりなどの措置を講じたこともありました。

この自己啓発型コースで学ぶ人は、一定以上の意欲を持った人たちでしたし、集合研修は、お互いの意欲をさらに刺激しあう効果もあります。

この結果、研修が終わった後もそれぞれが自己啓発にいそしむという姿を見て我々担当部門としては、期待以上の効果を出せたんじゃないのかなと思っています。

人事・人材育成部門としては、こういった自己啓発型研修に参加している達が、相対的に人事評価で上位にランクされる姿を見て喜ばしく思っていました。

 

 

動機づけの誤謬

人材育成の基本は動機づけという話に戻りますが、動機づけとなると、とにかく褒めたらいいと勘違いしている管理職が多いことも事実です。

そのような管理職は、褒めることこそ動機づけと思いこんでいますから、「ほめる技術」については、結構しっかり学んでいて、そこそこできる人も多いのです。

「わかりやすい資料を作ってくれてありがとう。Aくんのおかげで見事に成約に至ったよ」

「お客さんが、Bさんの応対がいつも素敵ですねと言っているよ。営業を側面から支援してくれて、本当にありがとう」

こんな風に褒め言葉の勉強をしっかり行っていて、またタイムリーにその言葉を出すというセオリーも身につけているのです。

 

私は、管理職研修やコーチング研修などで、褒めることの重要性を必ずお話ししますが、受講者の皆さんからは、「褒めることの大事さはわかるけど恥ずかしい」 や「上手い言葉が見つからないので積極的にできない」など、消極的な意見をよく聞きます。
したがって、先ほどの例のような誉め言葉を、常に、タイムリーに出すことができる人は、それなりの努力をしてきたのだろうと思います。

一方、それだけで本当に動機づけができるのかというかといえばそうではありません。

 

ここで、ある会社の支店長の事例をご紹介したいと思いますが、その人は普段から部下のことをよく見ていて、ことあるごとに上手に褒めていました。

しかし、なぜか、部下のモチベーションは上がることは無く、むしろ、組織の雰囲気は停滞気味でありました。

 

なぜそうなったのでしょうか。

 

よくよく話を聞いてみると、「やる気は環境が整ってから生まれるものである」という動機づけの大原則をその人は分かっていなかったのです。

 

 

過去の有名な研究事例から

かつて、ハーズバーグが発表した2要因理論によると、職場における「不満の要因を解消しないと、動機づけを一所懸命やっても効果がない」ということがわかります。

例えば、危険、寒い、暑い、あるいは人間関係に悩んでいるなど、ネガティブな環境の中で働いている場合、例えその仕事にやりがいや魅力があったとしても、それ以前に、そのネガティブな状態を何とかしてほしいと望むわけで、そこが解消されないことには、モチベーションは高まらないとこのように述べています。

では、部下が不満を感じる要因とは何でしょうか。

先ほど述べた暑い、寒い、危険 などに加えて、残業時間が長い、作業量が多くてこなしきれない、人間関係にストレスを感じる、賃金が安い成果が認められない、などが挙がってきます。

ちなみに、これらは自己都合退職の主たる理由と同じです。

やめようかどうしようか悩んでいる人にいくら褒めても、退職を回避するほどの効果があるのかというとそこには疑問を感じますね。

5段階欲求説で有名なマズローも、「作業環境が整備され、安全の欲求が満たされて初めて、仕事における成果創出への意欲がわいてくる」と述べていますが、つまり、やりがいがあるとか仕事が面白いとかの満足要因があったとしても、それだけで不満を抑え込むことは難しいし、むしろ不満要因を解決しないと動機づけはその効果を生まないということだろうと思います。

 

話を戻しますが、先ほどの支店長の例で言うと、この支店では週替わりで次々に営業の活動課題が示され、それをこなすのにすごい時間がかかって残業が増えているという事情がありました。

つまり、支店メンバーは残業時間が長いことを何とか解決して欲しいと思っているのに支店長はそこには目を向けずに、(確かに残業が長いことを気にしながらも)褒めることを一所懸命やれば、メンバーもやる気になって頑張ってくれるだろうと考えていたわけです。

褒めることで、残業時間への不満を抑え込もうとしたということなのでしょうが、これは順番を間違えていると言わざるを得ません。

褒めることを頑張ったが報われなかったザンネンなケースです。

 

 

デキる管理職の動機づけ術

一方、できる管理職は、この場合だとまずは残業時間を少なくすることに取り組みます。

つまり、不満の最大要因を解消することに優先して取り組むわけです。

私の知っている別の支店長は、支店メンバーに対して「時間短縮を進めていく」と宣言したり、朝礼の回数を減らしたり、また上限時間を設けたり、あるいは夕方以降は指示を出さないなど、できることはすぐ実行に移していました。

本社から降りてくるたくさんの営業活動の課題も、その実効性を緻密に分析しつつ、かつその時の繁忙の状態も加味した上で、取捨選択するなど優先順位を明確して無駄なことは一切させないと徹底していました。

「動機づけが人材育成に重要な役割を果たすことは当然だが、いくら動機づけをしようが、その前に不満要因を解消してあげないと意欲が高まることは無い」とよく分かっていたのです。

ただ、これは理論や理屈から学んだのではなく、自身の過去の経験からこれが大事なんだと感じたのだと言います。

 

 

結果として部下の自律マインドを高める

加えて、このできる支店長の凄いところは、残業手当が一定の生活賃金になっていることも分かっているのです。

したがって、残業をゼロにするほどの時間短縮は目指しません。36協定に違反しない範囲で、適度な残業を命じたりしていました。

残業が多いのは嫌だけど、残業手当がなくなると収入が減るから、これはこれで、また別の不満要因になることを知っているわけです。

 

こういった匙加減は、上司部下間の信頼関係の構築に繋がるわけですね。

 

そして、そんな管理職の下で働く部下は、忙しくなっても文句を言わず、むしろ責任感を持って働こうとするのです。つまり部下の自律マインドも高まるのです。
そして、結果として成果も出るわけです。

その支店長は、自律マインドが高まって責任感を持って働こうとする部下に感謝を示し、成果が出た部下に対しては大いに賞賛していました。

一方で、成果が出なくとも、部下が一所懸命に取り組んでいたなら、それはその行動を褒めるなど、本当に上手いマネジメントをしているなと感心させられました。

 

結論

というわけで、今回は「デキる管理職の上手い動機づけ術」として

  • 不満要因に目を向け、それを取り除く努力をする。
  • ほめるなどの動機づけは、不満解消のあとにする。
  • これにより部下からの信頼感が高まる。
  • その信頼感が部下の自律マインドを高める。
  • 結果的に成果につながる。

といった事例を紹介しました。

 

デキる管理職は、動機づけの順番(シナリオ)をしっかり考えて、メンバーのモチベーションアップに取り組んでいるのですね。

 

(おわり)