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秘書室長としての適性に悩む(私の履歴書ep6)

こんにちは。

モチベーションLAB所長です。

 

前回は、労働組合の役員としての充実した時間について書かせて頂きました。

今回からは、いよいよ管理職としての第一歩を踏み出した秘書室での出来事を紹介しようと思います。

 

この秘書室には3年間在籍したのですが、様々な紆余曲折があった期間でした。

この3年間のことは何度かに分けて紹介させていただきます。

 

 

秘書室からの呼び出し

管理職アセスメントに合格したことは分かったものの、どのような職務・職位で管理職に任用されるかは、人事異動の発表(例年12月初旬)まで待たなければなりません。

 

個人的には、本社の営業部門の管理職(担当課長など)として昇格することはないと思っていたので、ならば、どこか地方の支店長にでもしてくれたら嬉しいなと勝手に考えていました。

やはり一国一城の主になってみたいと思いますよね。

 

しかし、人事発表を数日後に控えたある日、秘書室から呼び出しを受けました。

秘書室は本社四階にあり、頻繁ではないものの顔を出す機会も多かったので、気軽な気持ちで尋ねたところ満面の笑みで僕を待つN副社長(経営企画部と人事部の管掌役員)Mさん(当時の秘書室長)の姿がありました。

 

 

ショックすぎた異動告知

この時、どんな会話があったか明確な記憶はありませんが「吉川は明日から秘書室に勤務すること」といきなり告げられたことははっきり覚えています。

「えらい急な話やなあ(心の準備ができてない)」という思いと、「Mさんの部下なんか~(嫌やなあ)」という比較的ネガティブな気持ちが交錯した直後、予想だにしなかった驚きの一言を副社長が口にしました。

 

「吉川はMさんの後任だよ」

 

Mさんも、Mさんの前任の室長も部長クラスの資格を持つ方でしたから、まさか新任管理職の僕が秘書室長の任に就くなど考えもしないことでした。

しかも、まだ正式に管理職に昇格したわけでもありません。

 

重荷過ぎるという思いと、秘書室長なんて絶対に向いてない(その適性がない)との思いが交錯して、なんとか辞退できないかとも思いましたが、副社長から「よろしく頼むな」との声がかかり、そのまま社長室にあいさつに連れていかれました。

 

社長の前で「ご期待に沿えるよう頑張ります」と本心ではない言葉を口にしてしまった僕でしたが、内心では「新任の管理職にこんな大役が務まるか?」「どう考えてもミスキャストだろ!」というスッキリしない思いの中での船出でありました。

 

 

秘書室におしゃれは無用

この頃の僕は、営業企画部での上司の影響を受けて、ブルックスブラザーズのスーツやネクタイにハマっておりました。

若い頃は、デザイナーズブランドと呼ばれたタケオキクチなどを好んで着たものでしたが、大人になるにつれ、やや落ち着いたファッションがいいというアドバイスもありブルックスブラザーズに傾注することとなりました。

アウトレットストアやアメリカからの直輸入などを利用し、比較的安価にブルックスのスーツなんかを買っていたのですが、そもそもはアメリカントラディショナルということで、スーツにはピンストライプあるいはチョークストライプと呼ばれるような線が入っていたり、ネクタイもレジメンタル系が多かったように思います。

カッターシャツ白はもちろん持っていましたが、ブルーや薄いピンクなどのシャツも好んで着ていました。

 

しかしMさんから言われたのは

  • お洒落は秘書室に必要ない。
  • スーツは紺色かダークグレイ。もちろんストライプはダメ。
  • カッターシャツは白のみ。
  • ネクタイも比較的地味系のネクタイを着用すること。

 

こういった指導により、それまでに買い集めたスーツやネクタイのほとんどは役に立たないという状況となりました。

管理職になって給料が上がることは嬉しかったものの、その年の12月に支給された賞与からかなりの出費があったことは大変痛かったです。

そして僕はこの後、秘書室で3年間を過ごすことになります。

 

 

職位名称への戸惑い

一般的に秘書室と言えば、独立した部門として扱われるか、総務部の中のセクションとして位置づけられることが多いと思いますが、近畿コカ・コーラの秘書室は経営企画部に所属した組織でした。

というわけで、僕に与えられたのは、「経営企画部 部長代理 秘書室長」という、とても新任の管理職にはそぐわない重たい職位名でした。



さらには、名刺の裏面に英語で

Executive Assistant to the President

と表記されました。

 

このExecutive Assistant to the Presidentという名称は社長が指示したもので、単なる秘書ではなく社長補佐の役割を果たせということから与えられた職位名称でした。

 

この社長補佐の役割はいくつかあったのですが、主だったものを挙げると、社長が議長を務める経営会議(毎週火曜日に開催)の事務局としての任がありました。

経営会議の議題は、その時々の会社の重要事項から優先順位をつけて選定し、社長の承認を経て会議メンバーに周知しなければなりません。

具体的な議題は、役員(取締役)や各部門長と協議して決めるのですが、原案は僕が作ります。

これが大変な仕事でした。

 

 

難しかった調整

それまで比較的多くの仕事を担当したし、労働組合の役員としての経験があるとはいえ、役員や部門長クラスと調整することの難しさを嫌というほど味わいました。

とにかく、社長から「あの件はどうなっている?」と聞かれる前に議題設定をしなければなりませんので、全社のあらゆる課題の進捗状況を一つひとつ掴みながら適切なタイミングで議題設定をする難しさに四苦八苦したのでした。

 

また、社長に報告や相談をしたい役員や幹部から面談依頼があれば、それにも優先順位をつけて捌かなければなりません。ここで順番を間違えて叱られたことも何度もありました。

併せて秘書として、スケジュールの管理もしなければなりません。

「来客アポはできるだけ一つの日にまとめる」

「週に一度はゆっくり考えて頂ける日を確保する」

などMさんから引き継いだ内規も多く、こういったピリピリした毎日に何を目指して仕事をしたらいいのかわからなくなり、自信を失いかけたこともありました。

 

 

祇園遊びを覚える

さて、僕は3年間の秘書室生活を通して、お二人の社長に使えることとなりました。

お一人目は「I社長」で、近畿コカ・コーラボトリングの社長として赴任されてからはずっと京都市内(錦市場の近く)に住んでおられて、京都の夜に精通した方でもありました。

その関係で、お取引先に接待を頂くときも、社長が主催する食事会もその殆どは京都で行いますから、秘書の僕も事前の打ち合わせなどで有名料亭やお茶屋に出入りする機会が多々ありました。

また、I社長に連れられ祇園の料亭やお茶屋に連れて行っていただいたことが何度かあります。

相手(お店)からすると、秘書の坊ちゃん(当時僕は36歳)ですが、一応はビジネスの相手でもあるので、料亭の女将やお茶屋のお母さんには色々と可愛がっていただきました。

これは、普通ではなかなか経験できない貴重なものだったと思います。

 

 

一見さんお断り

京都の有名料亭やお茶屋さんなどは「一見さんお断り」なのですが、何故、初めて客を断るかご存じですか?

いくつか理由があるのですが、まずは「京都の遊びの文化を守る」ということがあります。遊び方を弁えた方でないと敷居を跨がせないということです。

 

そして、もう一つが決済の方法です。

こういったお店では、その場での現金決済は行いません。後日、請求書が届き、それに従って支払うという流れになります。

したがって、必ず支払ってくれる信用のある客しか相手にしないからです。

つまり、以前からの信用がある客か、その信用のある客から紹介された客しか利用できないというルールです。

 

当然、僕個人には信用がありませんが、秘書として何度も顔を出していることや、バックに会社やI社長がいることで、自然に信用が生まれることになりますが、さすがにあの給料では支払いができないので、プライベートで行ったことは一度もありません。

 

さて、祇園ではトップクラスの格式を誇る「TMY」というお茶屋さんがあります。

このお店に「今度、アメリカからのお客さんを連れてくるのでよろしくお願いします」とご挨拶に行ったところ、お母さん(女将さんのことをお茶屋ではお母さんといいます)から「せっかく来たのでちょっとお上がり」と座敷に通されました。

この時はお店が暇だったのでしょうね(笑)

 

そしてお母さんから、祇園の歴史や遊び方、お座敷で絶対やってはダメなことなどを教えて頂きました。

もちろん、教えてもらった技法を使う機会は今までに一度もないのですが(笑)、これもまたいい思い出です。

 

 

さて、僕が秘書室に異動して1年が経過したころ、I社長は次の株主総会で相談役に退かれることになり、後任の社長が大株主から赴任されることとなりました。

I社長は何かと厳しい人でしたので緊張に押しつぶされそうになった1年間でしたが、いろいろな貴重な経験をさせていただき、成長させていただきました。

 

そのI社長もすでに鬼籍に入られました。改めてご冥福をお祈り申し上げたいと思います。


(つづく)

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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