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人事グループマネジャー就任(私の履歴書ep12)

こんにちは。

モチベーションLAB所長です。

今回は、コカ・コーラウエストホールディングス株式会社(CCWH)で取り組んだ「新しい人事制度」の構築の話を中心に紹介します。

 

 

CCWHの課題

コカ・コーラウエストホールディングスは2006年の7月に発足しましたが、当初は実質的には準備や調整期間でした。

やはり統合の当初は様々に問題が生じ、その問題を後追いで解決していくことに終始した期間だったと思います。

しかし、この年の終わりごろから、人事の問題、特に賃金の問題を解決することが最重要な課題として急浮上してきました。

近畿コカの賃金水準はCCWJよりもかなり高く、同じ職位(例:部長職)では、1.3倍くらいの差だったのではないかと記憶しています。

もっと問題だったのは、CCWJの初級管理職(課長や所長クラス)の賃金よりも、近畿コカの一般職最上級の賃金水準の方がやや高いという事象でした。

こうなると、CCWJ側の当事者の不満の声も大きくなり、加えて法的な問題も生じてくるので、経営統合当初は人事の問題は緩やかに解決していくという方針も変更せざるを得なくなってきました。

 

人事グループマネジャー就任

そして、この問題を解決すべく、これまでその人事制度改革の準備を続けていた人事企画チーム(チームマネジャーは私)を人事グループに昇格させることとなりました。

ただし問題は「人事グループマネジャーを誰にするか」ということでした。

CCWHのグループとは部よりも格上の統括本部的な位置づけでしたから、グループマネジャーには執行役員クラスを充てるということが基本ルールとなっていました。

そこで、管理部門を管掌する専務執行役員が人事グループのグループマネジャー候補として何人かをリストアップし、CEO、COOなどトップ数人との会議に臨んだところ、CEOが指名したのはなんと私でした。

この会議の席で、「吉川さんでいいんじゃないですか? 皆さんどうですか?」とCEOが発言したところ、COOはじめ皆さんから反対の声もなく、その場で決議されてしまいました。

この時、私の社内職能資格は副部長級でしたので、任用の基本ルールからは少なくとも2ランクダウンとなります。

適任者がいない場合は、部長級から任用することもやむなしとの例外運用も無きにしも非ずでしょうが、さすがに私を充てるのは例外運用過ぎます。

 

 

その資格を有していない

その会議の中で、CEOに対し私は「念のために申し上げますが、私は副部長の資格しか持っておりません。ルール外任用となりますが。」と申告したところ、またしてもCEOが「ではこの場で部長級に昇任させたらいい。どうですか?」と発言し、これですべてが決まりました。

「やった~!給料が上がるわ」とか「最年少(この時、私は42歳)で、しかも何人も飛び越してのグループマネジャーや」などのポジティブな気持ちは一切なく、「こりゃ大変やわ」という後ろ向きの気持ちしか湧いてきませんでした。

加えてこの時、CCWHグループの人材育成事業を統括する「キャリア開発グループ」も新設することになり、その人選も議論されましたがCEOの「これも吉川さんにやってもらおう」という鶴の一声で私の兼務が決まりました。

若手を登用するのはいいとして、さすがにこれはやり過ぎじゃないかとも思いましたが、こうなると腹を括るしかありませんでした。

 

 

なぜ私だったか?

この時、CCWHグループには、3つの労働組合と1つの社員会があり、人事制度を統一していくためにはこれらの4団体との交渉や調整が欠かせません。

また、人事制度(特に賃金制度)を統合していくためには、賃金の水準が高い旧近畿コカの社員たちの既得権益を崩していかねばなりません。

そうなると、旧近畿コカ労組との交渉が最もハードルの高いものになることが想定されましたから、旧近畿コカ出身である私にやらせることがいいだろうという戦略的な要素があったことは容易に想像がつきます。

加えて、旧三笠コカ労組のT委員長とは、CCWHができるかなり前からゴルフでのお付き合いがあった関係で、そういった交流も考慮されたのかもしれません。

一方、旧CCWJ労組や社員会からはかなりの警戒を受けました。(相手にも色々な感情があったのでしょう。実際、旧CCWJ労組や社員会とは最後まで心を許すお付き合いはできなかったと思います)

おそらく、私に”突破力”が備わっていると思われていたでしょうし、私もその点にはやや自信がありました。

それは物流企画課時代に培った、Yさん(この時はCCWH副社長)に鍛えられて身についたスキルでした。

CEOはここを買ってくれたのだろうと思っています。

 

 

プロジェクト編成で臨んだ新制度設計

ただ、人事制度の統一といっても簡単にできるものではありませんから、CCWHには大手のコンサルティング会社から様々に売り込みがありました。

普通に考えれば、人事制度統合が喫緊の課題だとわかるわけで、そのようなセールスも当然の流れだとは思います。

一方、何社かの話を聞いてみましたが、客観性という点と概念的な方向付けという点では大手コンサルは使えるにしても、そこから先の詳細設計は自社でしなければならないし、いずれにしても労働組合をどう説得するかは理屈だけの世界ではありません。

結果的には大手のコンサルティング会社は使わず、ある方からの紹介で、大手メーカーの社員で人事の豊富な経験を持つA氏を当該制度設計の実務担当として中途雇用することになり、私の部下につけて頂けることとなりました。

そして、このA氏を新制度設計の担当部長に据え、人事企画チームから私を支えてくれたO君、さらに近畿コカの人事部からH君を制度構築プロジェクトのメンバーとして加え、半年以上の年月を費やして検討した結果、ついに新しい制度の方向性を定めることができました。

この間、労働組合や社員会との調整を進めてきましたが、やはり最も困難だった相手は近畿コカ労組でした。

 

 

新制度の合理性と疑念

職位階層ごとに適正な賃金の幅(上限と下限)を設け、その幅よりも上位の賃金が支給されている社員は人事評価にて最上位の評価がされなければ賃金が下がるという仕組みにして、数年をかけて当該階層の全員を適性幅に収れんさせるという制度にしましたので、一定の合理性はあったと思います。

ただ、その合理性だけで納得してほしいというのは難しい話で、何度も大阪に足を運び、何度も議論を重ね、時には感情的な対立もありながら、最終的には納得してもらいました。

この時、真摯に議論に向き合ってもらえたことは本当にうれしかったし、有難かったです。門前払いされても仕方のないことでしたから。

 

ただ、労組の幹部が納得したからと言って、すんなり導入できるものでもありません。

労組は労組で、中央委員会を経て執行委員会で決議しなければならず、この間には支部や分会での説明も行われます。

そこでは、「体のいい賃下げだ」「近畿コカの水準に合わせるという考え方はなかったのか」など、予想した通りの質問や意見が相次いだそうですが、あらゆる間接業務の効率化を進めたり、賃金の見直しによるコスト削減によりCCWHの体質を強化し、それをマーケットに再投資することで競争優位に立つというのがこの経営統合の目的ですから、ここで賃金水準を上に合わせるとその戦略は成り立ちません。

 

 

旧近畿コカ労組に感謝

旧近畿コカ労組の幹部はそのことを十二分に理解してくれていて、

「今は、短期的な組合員の利益よりも、将来を見据えた会社全体の利益を考えることが大切だ。この制度変更は、近い将来必ず組合員の利益として還元される。」

と熱心に説明を繰り返してくれた結果、見事に組合員を納得させてくれました。

この時の中央執行委員長のAさんや、事務局長のMさんにはいまだに頭が上がりません。今でも本当に感謝しています。

 

一方、組合員の労働条件の改善が労働組合の存在意義であるならば、旧CCWJの組合や社員会からは、統合を機に旧近畿コカの賃金水準に合わせてほしいという声が上がっても不思議ではなかったのですが、彼らからは「旧近畿コカの賃金水準を下げろ」という、耳を疑うような要求が寄せられました。

CCWH人事部門の責任者としては、「俺たちの賃金をあげろ」と言われる方が受け入れがたいので、これはこれでありがたい話ですが、この時は「労働組合って何なんだろう」と首をかしげざるを得ませんでした。

というわけで、無事に新しい人事制度の導入ができることになりましたが、この間、担当部長のAさん、O君、H君には本当によく頑張ってもらいました。

もう10数年も前のことですが、彼らにも心からの感謝を申し上げたいと思います。

 


さて、これでようやく一息つけると思った矢先、私の体に異変があることがわかりました。

そして、そのことが一つの要因となり、私は愛してやまなかったコカ・コーラでの生活に別れを告げることとなりました。

 

(つづく)